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「皇族のお1人だ。聡明でご立派な方で、今上陛下も信頼していた将来の右腕とも言えるお方だった。身分にかかわらず、わけ隔てなく接して下さったゆえ、友人が部落者であることも気になさらず、大変可愛がってくださったんだ。」
「なあ、鳥恒さん・・・・その扇様って皇族・・・俺の記憶が正しければ―――――――」
「瑞希お兄ちゃん?」
「ああ、お亡くなりになっている。」
「亡くなられたのですか!?」
「正確には、黒幕が弟宮の妻の父で、実行犯は弟宮の妻の実弟だ。実弟が仕事で使う薬品が、扇様の飲み物に混入されて、病気に見せかけて殺された。」
「えっ!!?」
「証拠はあるんすか?」
「ない!!証拠を残さずにやられたが、状況証拠では、奴らが犯人であることは間違いない!!それゆえに、扇様に恩のある部落出身の友人は、必ず敵討ちをしようと――――――天皇陛下のお側にお仕えしていたが・・・憎いかたきは天寿を全うして死んでしまった。憎しみだけが残ったと語っている。」
「そ、そんな極秘情報、僕らに話していいのですか!?」
「つーか、そもそもそれはマジな話なんすか?ウソだったら、名誉棄損で訴えられますよ?」
「扇様が倒れた時、現場にいた医師が、病気によって扇様が苦しんでいるものではないと確信をしている。ただ、これをネットなどで発信すると――――――――しゃべったわしらの身が危なくなる。だから部落の友人も、家族に危害が及ぶことを恐れ、泣く泣く、病死という判断に異を唱えなかった。」
「あの!わからないのですが―――――――なぜ、扇様は、殺されなければいけなかったのですか!?」
「弟宮側からすれば、邪魔だったんだ。」
「邪魔?」
聞き返せば、首を縦に振りながら鳥恒さんは言った。
「将来の天皇に、優秀な補佐がいては、有識者会議を開く時に、弟宮達の都合のいいような展開にならない。必ず邪魔をしてくる。そう思って、先手をうったんだ。」
「そんな!!ひどい!!」
「ああ、ひどいもんだ。現在の皇室は、女性が大半を占めている。女性皇族の中には、自分が降嫁することで、実家の宮家がなくなってしまうことを恐れ、結婚を延期されている皇族の方もいるほどだ。なぜ、そうなったと思う、蓮君?」
「えっ!?えーと・・・・・確か、宮家を継げるのが、男子だけだという法律のままだからですか?」
「そういうことじゃ。」
私の回答に正解だと告げる僧侶。
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