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「もう、いいじゃないですか。」
近藤の部屋に入ってからは一言も発さなかった沖田が、突然、ポツリと呟く。
「何だと?」
「確かに彼女は逃げはしましたけど、恐らくそれだけです。この方が脅威だとは私には到底思えません。」
「脅威か…」
自身の言葉を鼻で笑った土方に、沖田はムッとした顔をする。
「何がおかしいんですか。」
「総司、お前は自分の勘に甚だ頼り過ぎだ。いや、まぁいい。おい、女。」
土方の呼びかけに、凪はビクリと顔を上げる。
「では、質問を変える。お前はここを追い出されても、行く当てはあるのか?」
当然、行く当てなどないが、凪は黙って土方から視線を逸らす。何も言わないのが一番良いと判断したためだ。
「何か言ったらどうだ?」
突然、土方が腰を上げ、凪の目の前に膝をつくと、驚いて目を見開く凪の顎をそっと掴み、自分の目線と合わせるよう持ち上げた。
「土方さん!」
それを見ていた沖田が、慌てたように土方の肩を掴んだ。
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