新選組

5/9
前へ
/28ページ
次へ
「もう、いいじゃないですか。」 近藤の部屋に入ってからは一言も発さなかった沖田が、突然、ポツリと呟く。 「何だと?」 「確かに彼女は逃げはしましたけど、恐らくそれだけです。この方が脅威だとは私には到底思えません。」 「脅威か…」 自身の言葉を鼻で笑った土方に、沖田はムッとした顔をする。 「何がおかしいんですか。」 「総司、お前は自分の勘に甚だ頼り過ぎだ。いや、まぁいい。おい、女。」 土方の呼びかけに、凪はビクリと顔を上げる。 「では、質問を変える。お前はここを追い出されても、行く当てはあるのか?」 当然、行く当てなどないが、凪は黙って土方から視線を逸らす。何も言わないのが一番良いと判断したためだ。 「何か言ったらどうだ?」 突然、土方が腰を上げ、凪の目の前に膝をつくと、驚いて目を見開く凪の顎をそっと掴み、自分の目線と合わせるよう持ち上げた。 「土方さん!」 それを見ていた沖田が、慌てたように土方の肩を掴んだ。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加