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「当たり前だろう。どれだけの付き合いだと思っているんだ。」
「そうだな…」
沈黙が落ちる。近藤は探るように土方を見つめていた。
「…教えてはくれんのか。」
「それも分かっちまうんだな…なぁ、近藤さん。」
「何だ。」
「まだ確証があるわけじゃねぇんだ。だが、俺の仮説が正しければ、あいつは絶対にこのまま手元に置いておくべきだ。万が一、薩長なんかに渡ろうものなら、酷いことになる。」
近藤の目つきが、鋭いものに変わった。
「あのお嬢さんに、そこまでの価値があるというのか。その仮説とやらが正しければ。」
「あぁ。だから、もう少しだけ時間をくれ。」
「時間?」
「確証を得るまでだ。」
土方の言葉に、近藤がクスリと笑う。
「俺が駄目だと言っても、どうせお前は聞かんだろう。新選組の頭は俺かもしれんが、頭脳はお前だ、トシよ。」
土方はニヤリとして腰を上げると、
「ありがとな、近藤さん。」
静かに部屋を出て行った。
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