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「兄妹はどない頑張っても、一緒にはなれへんで。」
梅の言葉に、凪は驚いて俯かせていた顔を上げる。そんな目で見られていたとは微塵も思っていなかったのだ。
そんな凪の様子に、芹沢は面白そうに笑みを深めると、彼女の両肩をその大きな手でしっかりと抱いた。凪は恐怖に固まることしかできない。芹沢が耳元に顔を近付けてくる。
「俺が、兄上になってやってもいいんだぞ。そうしたら、色々何でも教えてやろう。」
小声で言われたその言葉に、凪は、震えを止めるかのように持っていた洗濯物をギュッと握り締めた。芹沢は大笑いしながら凪から離れ、縁側にもう一度腰かけると、梅の腰を力強く自分の方に引き寄せる。
「何て言うたん?芹沢はん。」
しな垂れる梅の言葉を無視した芹沢は、
「考えておけ。」
そう一言言うと、その後も大声で笑い続ける。
凪は逃げるようにその場から駆け出していた。
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