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走っても走っても、見知った景色が見えてこない。凪は泣きながら必死に走り続けていた。
「どうして…」
どれだけ走ったのか分からなかった。息があがり、その場に崩れ落ちてしまう。
「家がないの。」
いつもなら、鴨川からであれば十分もかからずにたどり着く我が家。だけど、今日はそれがいくら走っても見つからない。周りは知らない景色ばかりで、街灯すらない真っ暗な砂道の脇に立つ家々は、現代では考えられないような木造の平屋ばかりだった。凪は震える身体を抱き締めるようにその場に蹲る。
その時、近くで物音がしたかと思うと、目の前の家の戸が開き、驚いたような顔をした女性と目が合った。彼女もまた着物を着ており、髪を日本髪に結っている。
「だ、誰や。こないなところで何してるん?」
「わ、私は…」
声が震えて上手く言葉を紡げない。すると、ポンっと肩に何かが乗っかった。
「見つけた。」
凪は絶望に目を見開く。月を背に立っていたのは、先ほどの青年だったのだ。
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