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真夏日
慶応四年五月三十日(一八六八.七.十九)───。
蝉の声が部屋の中にまで響き渡る夏の昼下がり。じっと座っているだけでも汗が噴き出すほどの暑さだというのに、布団の上に横たわる沖田は、痩せ細った身体を隠すように掛布団を首まで持ち上げると、その真っ白な顔を枕元に座る少女へと向けた。
「凪……」
その後の言葉は今にも消えてしまいそうなほど小さかったが、少女は全てを理解したかのように大きく頷く。
「良かった」
その少女の反応に、沖田は心底嬉しそうに微笑むと、静かに瞼を閉じた。
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