第2話 外の世界への関心

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第2話 外の世界への関心

 その日から、私はクレアにゲームの仕方を教わるようになった。 『転生したらお姫様だったので理想の王子様を見つけます』  これが、この乙女ゲームのタイトルである。 「お姫様? もう私、お姫様なんですけど?」  私がクレアにそう言うと、クレアは苦笑いをして答えた。 「庶民のゲームなので。ラルム様も庶民になったつもりでプレイしてください」 「わかったわよ……。で? どうやるの?」  私がしぶしぶゲームを始めようとすると、クレアは嬉々としてゲームのあらすじを話し始めた__。           『これは、事故により異世界に転生した少女の物語。 主人公の少女は、目が覚めると自分がお姫様になっていることに気づきます。 初めは戸惑う主人公でしたが、次第にお城での生活にも慣れていきます。 しかし、ある日突然主人公に結婚の話が舞い込み……そこから生活が一変します。 結婚したくない主人公は、なんとかお城を抜け出し旅に出ることを決めました。 そこで出会うのが四人の王子様です。 見た目も性格も全く異なる王子様たち。 さて、彼らとはどんな旅が待っているのでしょうか……』         「これがこのゲームの大雑把なあらすじになります」 「へえ、王子様と旅をするのね。簡単そう」 「ラルム様、このゲームを侮ってはいけません。数々の選択肢によって結末が決まるんです。下手をすると、バッドエンドになりますよ」 「バッドエンド?」 「はい。物語はハッピーエンドばかりではないのですよ、ラルム様」  クレアは、そう言って意地悪そうに笑いながら、ゲームの操作の説明を始めたのだった__。           ☆ 「では、実際にやってみましょう」 一通りゲームの説明をした後、クレアは私にゲーム機を手渡した。 画面には、私が選んだ王子様が映っている。 『光の国の王子 ルーカス』 それが私が最初に選んだ攻略キャラである。 クレアに言われた通りに、ルーカスのルートをスタートさせる。 旅に出た主人公が、その道中で怪我をしたルーカスに出会い、二人で旅を始めるのだそうだ。 「選択肢に気をつけて楽しく遊んでください。では、私はこれで失礼いたします」  クレアは、次の仕事の時間が迫っているため私にお辞儀をして部屋を出ていった。 1人取り残された私は、ゲーム機の画面をもう一度眺める。 「庶民はこういう遊びをしているのね。私ももっと外の世界を知りたいわ……」  城の中しか知らない自分を、改めて思い知らされた気がする。 もっとこの国や近隣諸国のことを知りたくなってしまった。 私は、しばらくそんな考えに浸っていたが、気を取り直してゲームを始めたのだった__。           ☆  今日は、城に家庭教師のライアン先生が来る日だ。 ライアン先生は、私が幼い時から勉強を見てくれている四十代の男性で、見るからに品行方正な紳士である。 私は、一応この歳になっても、花嫁修行という名目で勉強をさせてもらっている。 今日は、この間考えたことを先生に教えてもらおうと思っていた。 「失礼いたします、ラルム様。おや? 今日はどうしたのですか? いつもと違い、やる気が感じられますね」  ライアン先生は、きちんと座って待っていた私を見て大袈裟に驚いたフリをする。 「失礼ね! いつも私はやる気があるわよ。 ところで、今日は先生に教えていただきたいことがあるの」 「ほう。どんなことでしょうか?」 「この国の現状や、周りの近隣諸国のことを教えてほしいの」  私の言葉がとても意外なものだったのか、ライアン先生は真面目な顔で、掛けていた眼鏡をくいっと指で上に押し上げた。 「いきなりどうしたのです?」 「先生、私もう23歳なのよ。そろそろ城の外に出てもいいと思わない? でも、知識が何もないんですもの」  私がそう言うと、ライアン先生は理解したようにうなづいた。 「なるほど、そういうことでしたか。まあ、そうですね。知見を広めることは非常に大事なことです。いいでしょう。今日はそのテーマを勉強いたしましょう」  ライアン先生はそう言うと、プリュイ王国の現状と近隣三ヵ国について説明を始めるのだった__。
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