第33話 さらっとプロポーズ?!

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第33話 さらっとプロポーズ?!

 お父様の苦々しい顔を見て、お母様が尋ねた。 「サイラスって……確か、あなたの親友ですわよね?」  お母様の言葉に、お父様はうなづいた。 「正確には『親友だった』と言ったほうがいい」  お父様は、気遣うように私を少し見てからレノーに言った。 「レノーくん。私は昔、君のお父上を怒らせてしまってね。それ以来、絶交状態が続いている。あいつは、プリュイ王国との国交も断絶してしまって……。それなのに、なぜ君はこの国に来たんだい?」  お父様の言葉に、レノーは何かを決意するように下を向いた後、再び顔を上げてお父様をしっかりと見つめた。 「今、我が国『サーブル王国』の国民はとても不自由な生活を強いられています。それもこれも、父上がプリュイ王国との国交を断絶したためなのですが……。それで、私が直接プリュイ王国の国王様に国交回復をしていただきたく馳せ参じた次第です」 「サイラスはこのことを知っているのかい?」 「父上には、国交回復をして欲しいという話はしてあります……でも本当に私がプリュイ王国に来ているということは……知らないと思います……」 「そうか……」  お父様は、はーっと息を吐くと下を向いた。 そんなお父様を見て、レノーが思い出したように話を続けた。 「ここに来る前に姉から聞かされた話があります。姉は、母上から聞いたそうなのですが。なんでも父上が怒ってしまった理由が、ラルム姫が生まれた時にお祝いを贈ったにもかかわらず蔑ろにされた、とかなんとか……」  それを聞いたお父様は、その当時のことを思い出したのか申し訳なさそうにうなだれた。 「ああ、その通りだよ。ラルムが生まれた時、まさかラルムが『涙姫』だとは思わなくてね。サイラスもラルムが生まれたことをとても喜んでくれたんだ。でもそれからすぐにラルムが『涙姫』だとわかって……。その当時、この国では『涙姫』の存在は隠さなければいけなかった。もちろんお祝いも出来ない。それで、私はサイラスからのお祝いを断った。理由も明かすことが出来ずにね」  (そんなことがあったのね……)  隣で事の一部始終を聞いていた私は、お父様の話を黙って聞いているレノーを見た。 レノーは、少し考えるように難しい顔をしていたがすぐにお父様に自分の意見を伝えた。 「今、その理由を父上に教えることは可能でしょうか? 私でよろしければ、その役目を引き受けさせていただきます」 「え? あ、ああ。あれから時も過ぎたし、もう『涙姫』の存在を隠すなんてことはしなくてもいいと思っているが……。君にそんなことを頼んでもいいのかい?」 「もちろんです。私は……ラルム姫を愛しています。彼女の存在をちゃんと父上に知って欲しいんです」  (!!!)  レノーが私を愛しているという突然の告白に、私はもちろんお父様もお母様もびっくりして顔を見合わせている。 「あなたたち、そんな関係なの?」  お母様が、焦ったように私に尋ねる。 私は慌ててそれを否定した。 「変な関係ではないわ! レノーは出会ってからずっと私のことを守っていてくれただけなの」  (キスはしたけど……)  レノーは立ち上がり、慌てている私の手をそっと握った。 そして、お父様とお母様に向かって言った。 「私は結婚するならラルム姫以外考えていません。ラルム姫も同じ気持ちでいてくれると思います」  レノーはそう言うと、私を見つめた。 レノーも私と結婚したいと思ってくれている。 それをレノーの口からはっきり聞けただけで、私は胸がいっぱいになった。 「私も同じ気持ちです。レノーとずっと一緒にいたい」  私がそう言うと、レノーは嬉しそうに微笑んでくれた。 そんな私とレノーを見て、お父様がつぶやいた。 「こんな偶然があるなんてな……」  お父様のしみじみとした言葉に、お母様もうなづいた。 「本当ね。まさかあなたの親友の息子を連れてくるなんて。やっぱりラルムは特別な星の下に生まれた子なのよ」 「そうだな」 「あなた、あれ以来たまに落ち込んでたでしょ? いい機会じゃない。二人に任せてみましょう。いつまでも、あなたの落ち込んだ顔見たくありませんからね」 「ああ……そうだな」  お父様とお母様は顔を見合わせて笑い合うと、私とレノーに向かって言った。 「レノーくん。私からサイラス宛に手紙を書く。それを頼めるかな?」 「はい。必ず父上に届けます」 「うむ。それと、ラルム」 「はい」 「お前もレノーくんと一緒に『サーブル王国』に行ってきなさい」 「はい!」  レノーの故郷に行ける。 私は、迷うことなくお父様に返事をした。  こうして、私はレノーと一緒にレノーの故郷である『サーブル王国』へ行くことになったのだった__。
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