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第34話 いざ、サーブル王国へ
お父様が、近隣各国へ『サーブル王国』との国交回復を考えていることを伝えた。
それからすぐに、私とレノーはお父様の手紙を届けるためサーブル王国へ向かうことになった。
プリュイ王国とサーブル王国の国境まで送ってくれた使用人たちにお礼を言って車を降りる。
ここまで私と同行したいと言って、ついてきてくれたクレアに私は言った。
「行ってくるわね、クレア」
「ラルム様、ご武運を!」
「やだ、大袈裟よ」
「これ、一度言ってみたかったんですよね。まさかラルム様に言うとは思いませんでしたが」
クレアは、そう言って楽しそうに笑った。
クレアのおかげで緊張がほぐれる。
「じゃあ行こうか」
私とクレアの掛け合いに微笑んでいたレノーが、私に言った。
「ええ」
「お手をどうぞ、姫君?」
レノーが私の手を取り、二人で笑い合う。
「レノー様! ラルム様のことを本当によろしくお願いします! お二人がサーブル王国の国王様に認めていただけるよう、祈っておりますので!」
クレアがレノーに思い切りお辞儀をすると、レノーは真剣な顔で答えた。
「任せてくれ。必ず彼女のことを父上に認めてもらう。そして、二人で晴れやかな気持ちでプリュイ王国に帰るよ」
「ううっ……ありがとうございます。必ず戻ってきてくださいね……ぐすっ」
「ほら、泣かないの! 私とレノーは大丈夫だから! じゃあね、行ってくるわね」
泣き出したクレアに手を振って、私はレノーと一緒にサーブル王国のお城に向かって歩き出した。
☆
少し歩くと、街の向こうにお城が見えてきた。
まだ早朝の街には、人通りがほとんどない。
建築物など、色々なものがプリュイ王国とは違っていて、観光気分で街中を眺めながらお城までの道を歩く。
(ここが、レノーが生まれ育った場所……)
そう思いながら、隣にいるレノーを見上げる。
レノーはやはり少し緊張しているのか、お城を一心に見つめていた……。
そうこうしているうちに、私とレノーはお城の門の前に到着した。
(すごく古風で立派なお城!)
レノーは、私の手を少し強く握りながらお城を見上げると、覚悟を決めたようにお城の門をくぐっていく。
門で警備をしていた門番が、レノーの顔を見て驚きながらも姿勢を正した。
「レ、レノー様! おかえりなさいませ!」
「ああ。役目ご苦労。ところで、父上はいるか?」
「は、はい。今日は特にご用事もなく、城でゆっくりされるかと」
「そうか……」
レノーはそう言うと、私を見つめてうなづいた。
私もそれに答えてうなづく。
そんな二人に、門番が申し訳なさそうにして尋ねた。
「レノー様。こちらのお方は?」
「私の大切な人だ。プリュイ王国の姫君」
「プ、プリュイ王国の? あっ、大きな声を出して申し訳ありません! 失礼いたしました、お通りください!」
門番が、慌てたようにお辞儀をする。
レノーはそれを確認すると、私の手を引いて城内にいる国王の元に向かった。
レノーが帰ってきたということが門番から伝わったのか、城内ではたくさんの使用人たちがレノーを待ち構えていた。
「レノー様! おかえりなさいませ。ローズ様が毎日心配をしておりました。先にローズ様にお会いになりますか?」
「いや、姉上の前に先に父上に会う。報告したいことと、渡したいものがあるんだ」
「かしこまりました。では、国王様に伝えて参ります」
執事はそう言って国王の元に行き、すぐに返事をするために戻ってきた。
「国王様に伝えて参りました。謁見の間に来るように、とのことでございます」
「わかった。行こうラルム」
「はい」
いよいよ、サーブル王国の国王様、レノーのお父様にお会いする。
ドキドキと緊張で固まってしまった私を見て、レノーが繋いだ私の手にキスをして耳元で優しくささやいた。
「大丈夫だよ。俺がついてる」
愛しい人の、低く優しい声に胸が高鳴る。
(レノーがいてくれる。大丈夫。きっとうまくいくはず)
私は心の中で自分にそう言い聞かせると、レノーと一緒に国王様が待つ謁見の間に向かった__。
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