第四話 突然の告白

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第四話 突然の告白

昨日は浮かれ過ぎて、一睡も出来なかった。 ヒーローに抱きしめられた、あの瞬間が 夢のようで、心地が良くて、顔は緩みっぱなしだった。 何より、名前を呼んでもらえたのが最高に嬉しかったんだ。 「おい、おーい!澤井くん? 聞いてますか?」 「あっ、はい!すみません。何ですか?」 「何ですか?じゃないよ! ボケっとしてないで、配送行くよ!」 原咲さんに怒られて、僕は急いで準備をした。 今日は青田さんが、違うチームに行っていて、 配送は原咲さんと二人だった。 僕は、気になっていたヒーローの事を聞こうと 思った。 トラックに乗り込んで、一通り配送業務をこなした。休憩時間になって、僕は原咲さんに質問をした。 「あの…。この前言ってた…ヒーローの事なんですけど…。」 「ん?ヒーロー?俺何か言ったっけ?」 「駅で、会った時言ってたじゃないですか? 花田さんは、『俺にとってもヒーロー』って。 あれは、どういう意味だったんですか?」 「あー!それね!確かにそんな事言ったね…。 それは、健太が俺を助けてくれたからだよ。 健太と初めて出逢った時の事なんだけど、 俺、まだ学生でさ、四年だったんだけど、何度も就職に失敗して落ち込んでたんだわ…。 酒飲んで、酔ってあの駅のホームの椅子で寝てしまったんだ。その時にスリにあってさ…。 俺が寝てる隙に、財布盗んだ奴がいて、それを見ていた健太が捕まえてくれたって訳。 俺、酔ってたし、気づいた時にはもう騒ぎになってて、警察とかも来ててさ、ビビったよね…。見てなかったけど、後で聞いたら背負い投げして、捕まえたらしいんだよね。 君が見たって言ってたやつだよ! 凄いよな!だからあいつは俺にとってもヒーローなんだよ! 年下なのに、しっかりしててさ…。 確か、あの時18歳って言ってたから、今の澤井くんと同い年だったんだな。 懐かしいなぁ…。」 原咲さんは、昔を思い出して、懐かしさに浸っていた。僕は原咲さんの話を聞いて羨ましくなった。 (僕も、ヒーローに助けてもらいたいなぁ…。)
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