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僕は全速力で走った。
こんなに走ったのは、学生以来だと思った。
ついこの間まで学生だった事を思い出した。
僕は高校を卒業したばかりの18歳だ。
今日から社会人の仲間入りを果たした。
僕の就職先は、植物を専門とする小さな運送会社だった。
遅刻ギリギリだったが、何とか出勤時間に間に合う事が出来た。
会社の事務所では、副社長の小野寺さんが出迎えてくれた。
スタッフは、全員で20人だそうだ。
今年の新入社員は、僕を入れて2人だけだった。
「おはようございます。
今日からお世話になります。
澤井賢哉です。
一生懸命働きますので、よろしくお願い致します。」
「初日から、遅刻ギリギリとはな…。
まぁ、頑張りたまえ。所で君は…
車の免許はまだないんだよな?」
「あっ、はい。今、自動車学校に通っている
途中なんですよ。」
「そうか…。じゃあ…まだ運転業務は出来ないから、とりあえず、配送する植物を覚えてもらおうかな。それから、トラックに積み込みする
作業もしてもらうよ。
まず、こっちについて来てくれるかな。」
僕は、小野寺さんの後について行って、作業現場を確認した。広い倉庫に沢山の植物が並んでいる。配送する場所ごとに仕分けされていて、
トラックに積み込みをする作業が行われていた。僕は、小さい頃から植物が好きで、沢山の植物図鑑を持っていた。
男の子なのに、花が好きなんて変わった子だと
言われる事もあったけど、好きな物は好きだから、やめられなかった。
本当は、花や植物を研究する仕事に就きたかった。でも、現実は厳しくて、大学へも行けず
今の職場をやっとの思いで探して、就職する事が出来た。
少しでも、植物に関われる仕事がしたかったんだ。
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