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第六話 揺れる想い
「えっ?これは…一体どういう状況でしょうか?
僕は…何をしたのでしょう?」
僕の頭はパニックを起こしていた。
原咲さんは心配そうな顔をしている。
「大丈夫か?澤井くんは更衣室で倒れたんだよ。覚えてない?まだ寝ててもいいぞ。
家まではもう少し時間かかるからな。」
「えっ?僕…倒れたんですか?
そういえば身体が重いです…。
ってか…すみません…。
僕…原咲さんの膝…で寝てたんですね…
起きます!」
「あぁ、いいって!まだ熱あるんだから
寝てなさい。
暴れたらもっと熱上がるから…。
気にしないでほら、おいで!」
そう言って原咲さんは優しく僕を抱き寄せて、
膝に寝かせてくれた。
原咲さんの膝の上は、とても温かくて、
心地が良くて、幸せな気持ちにさせてくれた。
「ありがとうございます…。」
僕の心臓はうるさいほどにドキドキと鳴り響いていた。原咲さんに気づかれるんじゃないかとハラハラしながら、いつの間にか僕は膝の上で眠りに着いていた。
そして、次に気づいた時にはベットで寝ていた。
僕はゆっくりと目を開けて、天井を見た。
いつもの家とは様子が違う…。
(ん?あれ?何だか身体が…えっ??
なっ、何で?僕…服着てない?)
僕はそのまま起きあがろうと辺りを見渡す…
すると、見てはいけない光景を目にして
思わず大声をあげてしまった。
「ぎゃーーーわーーわーわわわわわわぁ!!」
なんと、僕のすぐ隣には上半身裸の原咲さんが
寝ていたのだった。
僕のその大声で、原咲さんは目を覚ました。
「んぁ?…うるさいな…。何?どうした?」
「ど、ど、どっ、どうしたじゃないですよ…。
これは…どういう事ですか⁈」
原咲さんは何故か笑っている。
「あははは、元気そうで良かった!」
「何、笑ってるんですか?
だって…僕…裸…。
何で服脱いでるんですか?」
「昨日、澤井くんは更衣室で倒れて、熱があったから、タクシーで家に連れて行く事にしたんだ。でも、熱が高くてタクシーで寝てたし、君の家知らないから、とりあえず俺の家に連れて帰って来たわけです。
それで、汗をすごくかいてたから脱がせただけだよ。
あっ!もちろん何もしてないよ!
さすがに、俺は熱ある人襲うようなクソ野郎じゃないから!」
「そうだったんですね…。
取り乱してしまってすみません…。
僕…ご迷惑をお掛けしたんですね…。
申し訳ありませんでした…。
介抱して下さってありがとうございました。」
「別にいいよ…。ってかうち狭いし、余分な布団なかったからさ…。同じベッドで寝ててびっくりしたんだよな…?驚かせごめんな…。」
「あっ、いえ…。
逆にすみません…。」
原咲さんは、僕の服を洗濯して乾燥機までかけてくれていた。
その上、朝ご飯まで用意してくれたのだ。
原咲さんはとても、心の優しい人だ。
僕は原咲さんの事を知るたびに、胸が熱くなるのを感じていた。
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