第六話 揺れる想い

1/7
前へ
/38ページ
次へ

第六話 揺れる想い

「えっ?これは…一体どういう状況でしょうか? 僕は…何をしたのでしょう?」 僕の頭はパニックを起こしていた。 原咲さんは心配そうな顔をしている。 「大丈夫か?澤井くんは更衣室で倒れたんだよ。覚えてない?まだ寝ててもいいぞ。 家まではもう少し時間かかるからな。」 「えっ?僕…倒れたんですか? そういえば身体が重いです…。 ってか…すみません…。 僕…原咲さんの膝…で寝てたんですね… 起きます!」 「あぁ、いいって!まだ熱あるんだから 寝てなさい。 暴れたらもっと熱上がるから…。 気にしないでほら、おいで!」 そう言って原咲さんは優しく僕を抱き寄せて、 膝に寝かせてくれた。 原咲さんの膝の上は、とても温かくて、 心地が良くて、幸せな気持ちにさせてくれた。 「ありがとうございます…。」 僕の心臓はうるさいほどにドキドキと鳴り響いていた。原咲さんに気づかれるんじゃないかとハラハラしながら、いつの間にか僕は膝の上で眠りに着いていた。 そして、次に気づいた時にはベットで寝ていた。 僕はゆっくりと目を開けて、天井を見た。 いつもの家とは様子が違う…。 (ん?あれ?何だか身体が…えっ?? なっ、何で?僕…服着てない?) 僕はそのまま起きあがろうと辺りを見渡す… すると、見てはいけない光景を目にして 思わず大声をあげてしまった。 「ぎゃーーーわーーわーわわわわわわぁ!!」 なんと、僕のすぐ隣には上半身裸の原咲さんが 寝ていたのだった。 僕のその大声で、原咲さんは目を覚ました。 「んぁ?…うるさいな…。何?どうした?」 「ど、ど、どっ、どうしたじゃないですよ…。 これは…どういう事ですか⁈」 原咲さんは何故か笑っている。 「あははは、元気そうで良かった!」 「何、笑ってるんですか? だって…僕…裸…。 何で服脱いでるんですか?」 「昨日、澤井くんは更衣室で倒れて、熱があったから、タクシーで家に連れて行く事にしたんだ。でも、熱が高くてタクシーで寝てたし、君の家知らないから、とりあえず俺の家に連れて帰って来たわけです。 それで、汗をすごくかいてたから脱がせただけだよ。 あっ!もちろん何もしてないよ! さすがに、俺は熱ある人襲うようなクソ野郎じゃないから!」 「そうだったんですね…。 取り乱してしまってすみません…。 僕…ご迷惑をお掛けしたんですね…。 申し訳ありませんでした…。 介抱して下さってありがとうございました。」 「別にいいよ…。ってかうち狭いし、余分な布団なかったからさ…。同じベッドで寝ててびっくりしたんだよな…?驚かせごめんな…。」 「あっ、いえ…。 逆にすみません…。」 原咲さんは、僕の服を洗濯して乾燥機までかけてくれていた。 その上、朝ご飯まで用意してくれたのだ。 原咲さんはとても、心の優しい人だ。 僕は原咲さんの事を知るたびに、胸が熱くなるのを感じていた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加