第一話 初出勤

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「あれ?健太はどうした?」 「あ〜、健太は、まだ来てないです。 あいつ遅刻だと思いますよ。」 「何?あいつが遅刻?珍しい事もあるんだな。」 「そうですよね?あいつ始めてじゃないですか? 何か、あったのかな?」 小野寺さんは従業員の人と何やら話していた。 僕は、小野寺さんに呼ばれた。 「あっ、こいつ、今日から入った新人の 澤井賢哉くんだ。 いろいろ、叩き込んでくれよ。」 「あっ、はい。分かりました。 えっと、僕は原咲真宙(はらさきまひろ)です。 澤井くん?よろしくね。」 「はい。よろしくお願い致します。」 「真宙は、10年目のベテランだから、安心して何でも任せられる。 彼に何でも聞きなさい。 後、今はここに居ないが、健太も頼りになる男だ。後で紹介するよ。 じゃあ、今日は彼に指導してもらうといい。 私は、急ぎの配送に行ってくる。 真宙、後は頼んだぞ!」 副社長の小野寺さんは、忙しそうに走って行ってしまった。 「はい。分かりました。 じゃあ、早速だけど、ここにある植物を 覚えてもらおうかな?」 「ここの植物だったら、ほとんど覚えて来ました。」 「えっ?そうなの?」 「あっ、はい。事前に頂いた資料に書いてあったので、目は通してあります。」 「へぇ、凄いじゃん! あの大量の資料読んだんだ。 君、珍しい子だね。本を読むのが好きとか?」 「あっ、はい。調べるのは得意です。 僕は、昔から植物が好きなんです。 植物の事だったら、何でも知りたいです。」 「そうなんだ。じゃあ、ここにある植物の事は よく知ってるって事かな? なら、今日は現場作業の流れを教えるよ。 そんなに、難しくないと思うから。 よく、聞けばすぐ覚えられるよ。」 原咲さんは、一から現場作業と配送の事を詳しく説明してくれた。僕はメモを取って 原咲さんの説明を聞いていた。 一時間半ぐらい経った頃だった。 配送に行っていた、小野寺さんが戻って来た。 「おーい、真宙!説明は進んでるか? 話の途中で悪いが、新人がもう一人いるんだ。 社員紹介もしたいから、一度二人で事務所に 来てくれないか?」 「あっ、はい。分かりました。」 僕達は、事務所に向かった。 事務所には、社員さんが五人と、もう一人の新入社員が立ち並んでいた。 「じゃあ、左端から紹介する。 営業担当の大倉瑞稀(おおくらみずき)と、 仲田圭介(なかだけいすけ)と、 配送員の青田孝則(あおたたかのり)それから、事務担当の中居恭子(なかいきょうこ)さんと佐野美穂(さのみほ)さんだ。 後、君と同期で、新入社員の桜井恭平(さくらいきょうへい)くんだよ。 こっちは、新人の澤井賢哉くんだ。 皆んな、仲良くやってくれ!」 「あっ、澤井賢哉です。今日からお世話になります。よろしくお願い致します。」 僕は、初出勤でかなりドキドキしていた。 (あぁ、緊張する…。会社って感じだなぁ…。 皆んなと仲良くなれるかな…。) 「あっ、それから、もう一人いるんだけど… 健太はどうした? まだ来てないのか?」 「あっ、さっき電話ありましたよ。 朝、出社途中に何かトラブルがあったみたいで、直接、急ぎの配送行ってから出社するって 言ってました。」 事務の佐野さんが、副社長に説明していた。 すると、突然事務所の扉がガチャリと開いて、誰かが慌てて入って来た。 僕達は、一斉にその扉の方を振り向いた。 「すみません!遅くなりました。」 「おっ、噂をすれば、やっと来たか! 皆んな、お前の事待ってたんだぞ! 健太!」 僕は、突然事務所に入って来たその男を 見た瞬間、驚きと興奮で我を忘れていた。 そして、思わず叫んでしまったのだ。 「あっ〜!!今朝のヒーロー!!」 僕のその言葉で、事務所に居た皆んなは 一斉に僕を見て、とても驚いていた。 僕の中で、何かが弾けて飛んだ。 これが、僕とその人との出会いだった。
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