第六話 揺れる想い

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(花田さんは僕のヒーローだ。 それは、あの日痴漢を倒したから…? あれ?僕は…何か間違えてたの?) 僕は大切な事を忘れているような気がした。 でも、それが何なのか分からない。 考えても答えが出てこない…。 僕は迷想を繰り返していた。 そして、あっという間に原咲さんとの 約束の日が来てしまった。 今日は、原咲さんと一緒に青田さんのお見舞いに行く日だった。 僕は、何の答えも出せないまま、朝からソワソワしていた。 昨日、原咲さんからメールが来て、 10時に家に迎えに行くと言われていた。 時計を見ると、もう10時を過ぎていた。 「あれ?もうそろそろかな?」 それから、30分、1時間とどんどん時間だけが過ぎて行った。 電話をしても、メールをしても返事がない。 僕は胸騒ぎがして、家を飛び出し、原咲さんの アパートへ向かった。 原咲さんの部屋は2階の一番奥の部屋だった。 僕は、階段を駆け上がり、原咲さんの部屋のインターホンを鳴らした。 返事がない…。 それでも、何度か鳴らしてみた…すると中からドタっと物音がした。 僕はドアの前で声をかけてみた。 「原咲さん?僕です。賢哉です。 中にいるんですか? 何かあったんですか?」 ドタバタと音がして、ガチャリと鍵が開いたような音がした。でも、原咲さんが出てこない… 僕はドアノブを捻って、恐る恐る開けてみた。 すると、原咲さんがドアの前で倒れていた。 息が上がり、とても苦しそうにしていた。 「原咲さん!?大丈夫ですか?」 僕は、急いで原咲さんを抱き抱えようと身体に触れた。すると原咲さんの身体は燃えるように熱かったのだ。 「すごい、熱じゃないですか! 今、ベッドまで連れて行きますね!」 僕は、自分よりも身体の大きい原咲さんを 何とか、担いでベッドまで運んだ。 そして、キッチンに急いで行き、冷凍庫から氷を出して、その辺にあったタオルを氷水で濡らして、原咲さんのおでこにおいてあげた。 「原咲さん?大丈夫ですか? 体温計とかあります? 勝手に探してもいいですか?」 原咲さんは熱で朦朧としているのか、とても辛そうで、話せる状態ではなかった。 僕は薬があるかどうか、勝手に探してみる事にした。 (どうしよう…熱が高そうで、辛そうだ。 解熱剤があればいいけど…。) 僕はあちこち探してみた。 タンスの引き出しを開けたり、クローゼットの中をのぞいたり、部屋中の物を探した。 そして、やっと薬箱を発見した。 薬箱を開けると、薬と一緒に何故か一枚の写真が入っていた。 僕はその写真を見て、何故かショックを感じてしまったんだ。 僕は、複雑な気持ちになりながら、薬と体温計を持って、原咲さんの元へ戻った。 体温計を原咲さんの脇に挟んで、熱を計った。 すると、40度も熱があって驚いた。 僕は、慌ててキッチンへ行き、コップに水を汲んで、原咲さんに薬を飲ませてあげた。 汗をかいていたから、勝手に服を脱がせて着替えもさせてあげた。 そして、またキッチンへ行って勝手に冷蔵庫を確認して、お粥を作った。 僕は、ベッドの横に座って原咲さんの様子を 眺めていた。 薬が効いたのか、さっきより息が落ち着いて、 眠っている様だった。 何度か冷たいタオルを交換して、僕はずっと 看病をしていた。 すると、眠っていた原咲さんが目を覚ましたのだ。 「んん…。」 「あっ、気がつきました?」 「んん??あれ…俺…。」 「原咲さん?大丈夫ですか?」 「えっ?澤井くん?何で…??」 「原咲さん…。良かった…。熱ですよ! 高熱で倒れたんです…。 覚えてないですか?」 「あー…。そうか…。ごめん…。 今日…約束してたのに…ごめんな…。」
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