第六話 揺れる想い

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原咲さんは少しだけ顔色が良くなっていて、熱を計ると、ちょっとだけ熱が下がっていた。 「原咲さん?僕、勝手にいろいろしちゃったんですけど…お粥とか食べれそうですか?」 「あっ、悪いな…。いろいろ助かったよ…。 じゃあ…少しだけ貰おうかな。」 「はい。分かりました。直ぐ準備するんで、 待ってて下さいね!」 僕は、キッチンへ行ってお粥を温め直した。  「お待たせしました。」 お粥をベッドまで運ぶと、原咲さんは懐かしそうな表情を浮かべて、何かを見つめていた。 僕は、原咲さんの目線の先にある物を見て、 ハッとしてしまった。 原咲さんのベットの横には救急箱が置かれていたんだ。 「澤井くん…。これ…見たよね?」 「あっ、はい…。勝手な事してすみません…。」 「これ見て…どう思った?」 その質問に僕は戸惑っていた。 原咲さんの表情が段々と曇って行くのを感じた。 僕が返事を返せないでいると、原咲さんは 笑って一言「ごめん」と言った。 「あっ、お粥ありがとうな…。 そろそろ帰った方がいいんじゃないか? いつまでも、ここに居たらダメだろ? 彼氏が怒るぞ!」 「えっ?彼氏って誰の事ですか?」 原咲さんの言葉に疑問を感じた。 僕は付き合ってる人なんて居ない。 なのに、原咲さんは突然変な事を言い出した。 僕の思考が追いつかない…。 「健太だよ…。健太と付き合ってるんだろ? キスしたって聞いたぞ…。 良かったな…お前のヒーローだもんな! 願いが叶ったんだよな! おめでとう…。 あっ、俺の事は気にしなくていいからな。 お前が幸せならそれでいいんだ。 だから…もう…帰ってくれないか…。 悪いな…ちょっと一人になりたいんだ…。」 何故か、原咲さんの言葉が強く胸を締めつけた。僕は何も言えなくて、その場に突っ立ていると、原咲さんが僕に追い打ちをかけた。 原咲さんは突然ベッドから立ち上がって、 僕の腕を強く引っ張って、玄関から外へ連れ出した。そして、ドアを勢いよく閉めて鍵をガチャリと掛けた。 僕はその瞬間、何かが壊れる音が聞こえた。
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