36人が本棚に入れています
本棚に追加
その日以来、原咲さんの態度が明らかに変わってしまった。
僕に話しかけてはくれるけど、一切目を合わせてくれなくなってしまったのだ。
僕は、どうしてなのか分からずに、ただ虚しさだけが残っていた。
あれから、気がつけば一ヶ月が過ぎていた。
大怪我をした青田さんが仕事復帰したのだ。
結局、青田さんのお見舞いには一度も行けなかった。
原咲さんに誤解されたまま、僕の時間は止まっていた。
会社では、青田さんの快気祝いをしようと盛り上がっていた。
「乾杯!!青田さん!仕事復帰おめでとうございます。」
僕達は、会社近くの居酒屋に来ていた。
皆んなが盛り上がっている中で、僕は一人静かにジュースを飲んでいた。
すると、それに気づいた花田さんが声をかけてくれた。
「最近どうした?元気ないな?
悩みがあるなら、聞くぞ。」
「えっ、別に何も悩んでないですよ…。」
「そういう風には見えないけどな…。
真宙さんと何かあったんだろ?」
花田さんは僕のヒーローだ。
何でもお見通しだった。
原咲さんとは離れた席に座っていた。
僕は、チラチラと原咲さんの横顔ばかり気にしていた。
笑った顔が眩しく見える。
原咲さんは青田さんと桜井くんの間に挟まれて座っていた。
何だか楽しそうに笑って話している。
原咲さんが桜井くんの肩に手を回していた。
それを見て僕は、胸が痛くて苦しくなった。
自分では処理できない感情が込み上げてくる。
僕はその場に居られなくなって、突然立ち上がり店を出てしまった。
それを見かねて、花田さんも店を出て来た。
僕は、自分を見失っていたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!