6 初ごはん美味しい

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「じゃあ、外に出ましょう。今日は晴れてて天気もいいし、丘の上からの眺めもきっといいですよ。部屋にひとりでいても仕方ないですしね」 「はい。ありがとうございます」  それで僕らは部屋を後にして、一緒に建物の外に出た。  召喚神殿の敷地はとても広かった。面積は野球場ひとつぐらいだろうか。周囲は高い石塀に囲まれていて、塀の向こうは空しか見えなかった。そこをぐるりと見て回る。  敷地内にある建物は大小五棟。とんがり屋根の大きな舘と小さめの館が二棟、それに倉庫のような平屋が二棟建っている。その後ろはなだらかな丘になっていて、樹木が整然と植わっていた。植えられているのは種類も大きさも様々な樹で、ひとつひとつが大切に石囲いでおおわれている。見た目は果樹園のようだ。ここでさっきの果実を育てているのだろうか。  舘の周囲と、果樹園と中庭を一通り見て回った後、最後に平屋造りの建物のひとつに連れていかれた。 「ここは浴場です」 「へえ」  建物の中は、ローマ時代の浴場のような造りになっている。入り口横に脱衣場があり、その奥にタイル張りの広い浴室があった。三十人は入れそうな浴槽には湯がなみなみと張られている。 「この地は温泉が湧くんです。リンタさんが落ちてきた泉も温かかったでしょう?」 「そう言えばたしかに」 「いつでも好きなときに入ってもらっていいですから」 「ありがとうございます」  温泉があるとはラッキーだ。身体を清潔に保てる。ファンタジー世界では湖や川で身体を洗ったりするのが普通だけれど、お湯が使えるのはありがたかった。 「じゃあ、そろそろ食堂に戻りましょうか。夕食の時間ですから」 「はい」  気づけば腹もすいていた。空を見あげると、太陽は西の山に沈んだところだった。  風がふわりと吹いてきて、僕の髪をはためかす。気温は二十度前後だろうか、頬にあたる空気は熱くも冷たくもなく心地よい。この世界は、いやこの国は割と温暖な地域にあるようだ。  どこかで鳥が鳴いている。キュルンキュルンという甲高い鳴き声は、聞いたことのないものだ。周囲では見知らぬ木々が葉を揺らし、足元には変わった形の花が咲いている。  向こうの世界にいたとき、よく見た海外ファンタジードラマの一場面のようだ。  いつもテレビを見るたびに、こんな世界にいってみたいなあと夢見たものだったけれど、本当に飛ばされてしまうなんて。  僕は驚きと感動と、そしてもう元の世界には戻れないんだといういささかの感傷を胸に、目の前の景色をしばし眺めた。
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