5 ここにきた理由

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 しかし召喚師による召喚が可能であるならば、魔法や魔術が存在している可能性もある。もしかしたら魔物もいるかも。それはちょっと嫌だなあと思いつつテーブルの間を進んだ。  奥ではオト少年が、長テーブルにピッチャーとゴブレットを用意して僕らを待っていた。 「まあ、座れ」  促されて、対面に腰かける。神殿長はゴブレットに淡い桃色の液体を注ぎながらたずねてきた。   「ではまず、君の名前をきこうか」 「はい。僕は、仲島倫多といいます」 「ナカジマ・リンタか。名はどちらだ」 「倫多です」 「ならば、リンタと呼ぼう。いいか?」 「構いません」  神殿長はふたつのゴブレットを満たすと、ひとつを僕に差し出してきた。 「私の名前はジルクード・エヴァ・ル。ここの神殿長を務める者だ。こっちにいるのはアニとオト。ここの神官だ」  僕は頭をさげた。この世界の挨拶方法は知らなかったので、日本流だ。  それにふたりも丁寧に頭をさげてきた。なるほど挨拶の流儀は同じなのか。 「お世話になります、神殿長様、アニさん、オトさん。どうぞよろしくお願いします」  僕の挨拶に、神殿長が微笑んだ。 「私のことはジルクードと呼んでくれ。まあ、君が降神と正式に認められたら、呼び方は『リンタ様』になるだろうがな」 「はあ」  なれるとは思わなかったので、曖昧に返事をしておく。 「ここは降神様を召喚するための召喚神殿だ。住んでいるのは私とアニとオト、そして数人の召使いのみだ。君は王には降神と認められなかったが、私は君が落ちてきたのをこの目で見ている。スマホも光って画面に御神託が出ていたのも確認した。だから一応、異世界からの客人として扱おう。捕らえた訳ではないので敷地内では自由に行動してもいい。けれど、外へは無断で出ないように」 「わかりました。ジルクードさん」 「万一逃げたら、王の兵が君を追うことになる」 「了解です」  出てもどうしていいかわからないだろうから、多分素直にここにいる。この人のもとに入れば安全だろうし。  僕はゴブレットに手を伸ばした。ふわりといい香りが漂うが、これはアルコールの匂いだ。 「あの、これ、お酒ですか」 「ああそうだが」  ジルクードさんが一口飲んで答える。 「すいません、僕、お酒は飲めないんです」 「飲めない?」  不思議そうな顔をされた。そんな人間がいるのかという反応だ。 「はい。あの、僕のいた世界では、二十歳になるまでお酒は禁止されているのです。だから飲んだことがないんです」 「二十歳? なるほど。そう言えばハルキ様のときも同じような話を聞いた気がする。では、君はいくつなんだ?」 「十八歳です」  「じゅうはっさい!」  三人が一緒に驚く。それにこっちもビックリする。
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