6 初ごはん美味しい

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6 初ごはん美味しい

 食堂での話が終わると、僕はアニさんに連れられて隣の建物へと移った。こちらは居住スペースらしく、廊下にドアがいくつか並んでいる。そのひとつをあけると、アニさんは僕を中に入れた。 「この空き部屋を使ってください。あとで召使いに掃除させておきますから」 「はい。わかりました」  部屋は六畳ほどで、机と椅子、棚、ベッドがあった。鎧戸がついた窓もひとつある。 「必要なものは揃えますので、何でも言ってください」 「ありがとうございます」 「それから、廊下沿いに続く部屋には僕らの部屋もありますから、何かあったらいつでもノックしてもらえば対応します」 「はい。どうもすみません」  ぺこりと頭をさげると、相手も同じ仕草をする。 「じゃあ、僕はこれで」  言いおいて、アニさんは部屋を出ていった。  残された僕は、入り口でぼんやりと飾り気のない殺風景な部屋を眺めた。  これからどうしたらいいんだろう。  まったく知らない土地に放り出されて、どうやって生活していけばいいのだろうか。  実際、転移に関しては半信半疑だったし、行き当たりばったりで死も覚悟で事故現場に向かったということもあり、移住の準備もしていなかった。手持ちのお金さえない。  桃谷先輩に会えれば何とかなると、それしか頭になかったから、いざ成功して現地にきてしまえば自分の準備の足りなさに呆然となった。  しかも肝心の桃谷先輩には、なぜか知らない奴扱いされてしまったし。 「どうしてなんだろ」  まったく理由が思いつかない。 「……はぁ」  不安に大きく息を吐くと、背後のドアがトントンと音を立てた。 「はい?」  ドアをあけたら、アニさんがひとりで立っていた。 「あれ。どうしたんですか?」  僕がきくと、アニさんは少し遠慮がちに微笑んで言った。 「あのですね。もし、お暇でしたら、神殿内をご案内しようかと思いまして。これからここですごすにあたり、そのほうが便利だと思いますし。ここ、広いんで迷子になるかもしれないし」  その言い方が、僕の憂いを心配しているような様子だったので目を見ひらく。 「それは……すごく助かるかも知れません」  アニさんの優しい気遣いに、落ちこんでいた気持ちが上昇した。嬉しくて思わず笑顔になると、アニさんもニコッと笑う。
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