2 異世界へ転移する

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 その人はめっちゃイケメンなのに、驚きすぎて面白い顔つきになっていた。  歳は三十代前半だろうか、十八歳の僕から見たらずっと大人な男性だ。顔立ちは外国人っぽい。彫りの深い目元に、高い鼻と素晴らしく形のいい唇はハリウッド俳優のような典型的イケオジだ。  水面から出た胸元は逞しく、肩も腕も筋肉が張っている。髪は鎖骨まであり、今はオールバックになっていて、したたるような男の色気が、恋にうとい僕の目を刺激した。 「…………」  こんな格好いい外国人、近くで見たことない。うっすらと胸元をおおう胸毛が、何ともいけないモノを見せつけられているようで慌てて目をそらした。 「誰?」  イケオジが声を発する。 「え? あ、えっと」  突然のことで、不審者のように狼狽(うろた)えた。元々僕はコミュ障の気があるので、こういうときにうまく反応することができない。 「どっから出てきた?」  男が凜々しい眉をよせて問う。警戒しつつも、だが動く様子はなかった。多分、全裸だから無闇に立ちあがることができないのだろう。 「……えと、あの」  答えようとして、ハッと気がついた。  男の言葉が理解できている。相手が(しゃべ)っているのは日本語じゃないのに。一体どういうことなのか。まるで頭の造りが変わってしまったかのようだ。  そのとき、離れた場所から大きな声がした。 「神殿長様ぁ――」  若い男の声に顔を向けると、ふたりの少年がこちらに駆けてくるのが見えた。  栗色の髪をした彼らも外国人だ。歳は十五くらいだろう、服装はチェニックのような上着に、くるぶし丈のズボンをはいて革ベルトをつけている。中世が舞台のゲームに出てくる村人のような恰好だった。 「ああ、もう! また神聖な泉で沐浴してっ!」  噴水までくると、少年のひとりが男に声を荒らげた。すると男は答える代わりに、僕のほうを顎でしゃくった。 「え?」  ふたりの少年が僕を見つけて、キョトンとなる。 「え? 何? 誰ですか、この人?」  少年らは驚いた様子で男に問いかけた。それに男が説明する。 「いきなり現れた。大きな水音がして、まるでどこからか落ちてきたみたいに、気づいたらそこにいた」 「ええ?」  少年のうちのひとりが、警戒する目を向けてきた。 「見たことのない顔ですね。泥棒でしょうか? 捕まえてくださいよ神殿長様」 「いや、……待て」  神殿長と呼ばれた男が少年を制する。 「着ている物を見ろ、あれは……」 「え?」 「えぇ? ま、まさか」  三人が目を大きく見ひらいて、驚きの表情になった。 「ああ。あの服装は、……ハルキ様のときと同じだ」  ハルキ。  その名前に僕は反応した。 「桃谷先輩がここにきたんですか!」  いきなり叫んだ僕に、三人は(そろ)って肩を跳ねさせる。 「桃谷春希さんです。その人、ここにきたんですか?」  僕と三人は、四メートルほど離れていた。しかしその距離があっても少年は驚きすぎたのか裸の男にしがみついた。  
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