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「何なんですか、この人」
「いきなり叫んで怖いです」
ふたりの少年を抱えて、男がいぶかしげな顔をする。
「モモタニ・ハルキ……。お前、ハルキ様を知ってるのか」
僕は声を張りあげた。
「知っています。僕、その人に会いにきたんです」
「会いに?」
僕の言葉を男が繰り返す。
「ああ、じゃあ……やっぱり」
先輩はトラックにはねられて死んだのではなく、異世界に飛ばされてたんだ。そうして僕も、先輩と同じように転移に成功した。
拳を握りしめて呆然となった僕を見て、少年たちが横から震え声を出した。
「で、では、この者は……『降神様』?」
「そんな馬鹿な。召喚師もいないのに、いきなり降神様が現れるなんてあり得ませんよ。こいつはニセ者ですよ、神殿長様」
「見るからに怪しそうな顔もしてますし」
ひどい。学校では陰キャと噂されていた地味な見た目の僕だけど。
「まさか、神殿長様が呼んだのですか?」
「いや、私はそんなことできんぞ」
男が首を振る。
「では、こいつはきっと降神様を騙って一儲けしようとしている悪者ですよ。ハルキ様の名前は誰でも知っていますから、服装だって、真似て作ることもできますし」
少年がこちらを睨みながら男にけしかけた。
「早く捕まえてくださいよ、神殿長様」
「む」
男が顔つきを恐くする。
「仕方ない」
そう言うと、いきなり立ちあがった。
ザバアと水音がたち、逞しい身体があらわになる。筋肉隆々のボディに均整の取れた手足は、まるでプロの運動選手のようだ。そしてチラと見えた危険な箇所。男はすぐに横を向いたのでその部分は隠れてしまったが、明らかに硬さを持っていた。
ゆるく勃ちあがり、男の動きにあわせて優雅に揺れる雄の象徴が僕の目を釘付けにする。ビックリするほど長くて太くて、素敵なシルエットをしていた。
こんなときになんだが、僕は桃谷先輩のことが好きだ。出会ってから三年間、ずっと恋をしてきた。だから多分、男の人が好きな性指向なんだろうと思っている。
けど桃谷先輩以外、好きになった男性はいない。先輩は線の細い美青年で、だから自分はそんなタイプが好みなんだろうと、おぼろげに考えていた。だがその固定観念が、今、男のモノで打ち砕かれたような気がした。
こんなときになんだが、異世界転移成功の驚きよりも、生まれて初めて見た、大人の生の立派な逸物に、僕ははるかに衝撃を覚えていたのだった。
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