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3 先輩との再会
神殿長と呼ばれた男は、噴水の横に投げ捨ててあったガウンを手に取ると、素早く身に着けた。
腰紐を縛りつつ僕にきいてくる。
「お前が異世界からきた降神だというのなら、その証拠を見せてみろ」
オリガミ。
初めて聞く言葉だ。けれど会話の流れからそれが異世界からやってきた人間を指すのだということは推察できた。僕は学校でそれほど成績優秀ではなかったが、それぐらいの頭はある。
しかし、証明とは?
戸惑っていると、男が手を差し出してきた。
「降神ならば、すまほを持っているはずだ」
スマホ。
それは馴染んだ言葉だった。馴染みすぎていて男の口から聞くと非常に違和感がある。
「スマホですか?」
「ああそうだ。ハルキ様の知り合いなら、持っていないはずがない」
ちょっとハッタリめいた口調だったが、僕は怯まなかった。ポケットを探ってスマホを探す。ありがたいことにスマホは一緒にこの世界に付いてきていた。
「はい、ありますよ」
立ちあがり、薄い機械を差し出すと男が眉をあげる。出すとは思っていなかったようだ。それにこっちはちょっと得意げな表情になる。
男はスマホを受け取ると、長方形の輪郭を指でなぞり電源を見つけるとそれを押した。
――使い方を知っている。
ビックリする僕に、相手は光った画面を見てから、スマホを戻してきた。
「鍵を解除しろ」
「あ、はい」
受け取ってパスワードを打ちこみ、また男に渡す。すると彼は指先で画面をスライドし始めた。
操作方法も知っている。
男がスッ、スッと指をすべらせ、タップする。
「なるほど」
横からふたりの少年がそれを覗きこんだ。
「確かにこれは、御神託を賜わす魔法板、『すまほ』だ」
「御神託を賜わす魔法板」
スマホはここでそんな畏れ多いモノになっているのか。
「ハルキ様が持っていらしたものと同じです」
「けどこのカバーはちょっと趣味が悪いですね」
うるさいし。
少年の呟きに僕は気分を害した。
「返してください」
手をのばすと、男が「いやまだだ」と言う。
「服を脱げ」
「えっ」
いきなり思いがけない命令をされて、両手で胸をおおい隠した。まさかここで全裸になれと?
身体検査でもされるのかと怯えたら、男はちょっと眉をよせた。
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