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「おばあちゃん。この年越し蕎麦おいしいよ!」
「ほうけぇ。そりゃ~えがった。みがたってるからかのう」
「えっ!この蕎麦、蕎麦の実から作ってるの!」
「うんだぁ。そばみみをたてるっていうじゃろ。ふひゃひゃひゃ」
TVでは紅白歌合戦が佳境に入っていた。
「このうたさぁ、さとみをよめっこさでぇしたときおめ~だすのう」
「ああ。いい歌だね。題名はコスモス。秋に桜って書くんだよ」
「ほ~、はなのなめぇけぇ。ほんだらでんわのでんにはなすは?」
「なんだい、おばあちゃん。それは電話だよ」
「べぇ~。モスモスじゃぁ。ふひゃひゃひゃ」
「・・・」
「さとし、うてぇてさんはだれじゃった?」
「さだまさし」
「ほ~。そうけぇ。そんかたは、よせやえんげいじょうのひとけぇ」
「寄席、演芸場?」
「うんだぁ。さらまわしじゃろ。いや、さるまわしじゃったかぁ。ふひゃひゃひゃ」
石川さゆりの津軽海峡冬景色のイントロが流れてきた。
「おめぇだすのう」
「えっ!何を?」
「うんだぁ。このうたっこさはやったとき、じいさんとほっけぇど~にいったんじゃ」
「えっ!そうなんだ。おじいちゃんもおばあちゃんもロマンチックだね」
「うんだぁ。おらたちがうちさでるときゃもうゆきげしきじゃった」
「・・・。それで連絡船には乗ったの?鴎は凍えそうに飛んでた?」
「うんだぁ。あんめぇさむうておらたちがこごえてなみだめぇじゃった。ふひゃひゃひゃ」
TVからは蛍の光が流れていた。
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