それは突然

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「今日の四十九日法要、無事終えたよ。お父さん」  先程机に置いたばかりの骨壷に向かって、私はそう声をかけた。  先祖代々の墓はあるけれど、冬は雪で覆われている。  だから納骨は、雪が解けて暖かい春を迎えてから。  そう家族と話し合い、それまではもう少し自宅の。  父の部屋に、骨壷を置くことになった。 (……不思議。昨日もこの部屋でお父さんが生活していたみたい)  定年退職してからも、これといって持病はなかった。  加齢を重ねるごとに体の節々は痛かっただろうけれど、長生きすると思っていた矢先。  四十九日前のこの部屋で、あなたは眠るように突然逝ってしまった。  それからの私の記憶は、今思い返すと曖昧で。  一日一日、必死に心の整理をして、泣いて、祈って、また泣いて、あっという間に時間が過ぎていく。  そうして忌明けとなった本日。  部屋に溢れるあなたの大切なものたちが、全て遺品となる事実に、また涙を流す。
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