会いたい

1/2
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

会いたい

 父と娘。  仲良しな家庭もあるだろう。  だけど私は、あなたを嫌いな時期もあったし、鬱陶しい時もあった。  何ヶ月も会話を交わしていなくたって、平気だったし困りもしなかった――。  だけど、自分自身が家庭を持ち母親になって初めて。  我が子を思う親心がどれほどのものかを、理解できたような気がした。  ――だから。  今更こんな気持ちになるなんて、私は本当に大馬鹿者だ。 「お父さん、私……」  もっともっと親孝行をしたかった。  家事に育児に仕事に忙しくて、頻繁に連絡できなかったことを謝りたかった。  親への感謝の気持ちを、言葉で伝えたかった。 「……後悔ばかりだよ……」  そう呟いて、私は眉根を寄せる。  今、あなたは“あちらの世界”で、何をしているのでしょうか。  あなたよりもっと前に逝ってしまった人々、自分の親や祖父母、旧友たちには会えたでしょうか。  久々の再会に喜んで、大好きなお酒を飲み交わしている頃でしょうか。  だとしたら、あなたにとってあちらの世界は、決して恐れていたところではないのかもしれない。  そう思うと、少しだけ安心はするけれど――。  私はこちらの世界で、毎日毎日祈るのです。  あなたに、会いたい――と。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!