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会いたい
父と娘。
仲良しな家庭もあるだろう。
だけど私は、あなたを嫌いな時期もあったし、鬱陶しい時もあった。
何ヶ月も会話を交わしていなくたって、平気だったし困りもしなかった――。
だけど、自分自身が家庭を持ち母親になって初めて。
我が子を思う親心がどれほどのものかを、理解できたような気がした。
――だから。
今更こんな気持ちになるなんて、私は本当に大馬鹿者だ。
「お父さん、私……」
もっともっと親孝行をしたかった。
家事に育児に仕事に忙しくて、頻繁に連絡できなかったことを謝りたかった。
親への感謝の気持ちを、言葉で伝えたかった。
「……後悔ばかりだよ……」
そう呟いて、私は眉根を寄せる。
今、あなたは“あちらの世界”で、何をしているのでしょうか。
あなたよりもっと前に逝ってしまった人々、自分の親や祖父母、旧友たちには会えたでしょうか。
久々の再会に喜んで、大好きなお酒を飲み交わしている頃でしょうか。
だとしたら、あなたにとってあちらの世界は、決して恐れていたところではないのかもしれない。
そう思うと、少しだけ安心はするけれど――。
私はこちらの世界で、毎日毎日祈るのです。
あなたに、会いたい――と。
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