14人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
だけど、そう祈るたびにあなたの顔が脳裏に浮かんできて――。
『んなことより、ちゃんと飯食えよ』
『孫たちのこと、しっかり育てろよ』
そう言われている気がして、もう叶わないのに“会いたい”と願う私の心が、徐々に救われていく。
そうだった。あなたは自分が家族から心配されると、話を逸らす性格だった。
決して弱みをみせない、少々頑固な昭和の人間。
そのせいで家族が困ることもあったけれど。
それは多分あなたなりの照れ隠しであり、心配かけないという家族への気遣いだったことに、ようやく気づけるようになった。
「……うん。ありがとう、お父さん」
だから私は、あなたと母の子供に生まれて本当に良かったと思っている。
あなたの体と魂は、もうこの世にはないけれど。
この世に存在していた“証”は、しっかりと受け継がれている。
あなたが育てた子供たち。
そして、あなたが大好きだった孫たちの血となり肉となり、記憶となって――。
fin.
最初のコメントを投稿しよう!