竜の言祝

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竜の言祝

目を覚ました一匹の竜は 空へ飛び立とうとして もう飛べないことに気づく 手を空にかざして握ってみたり 胸の前におろして広げてみたり 慣れない感触 竜は人となった ゆっくり歩いてみた 知ってるのに知らない世界 いつもより低い視野、いつもより高い視点 ときどき座って休んだ やわらかな草の合間にそっと横たわって 耳のすくそばで揺れた花が囁いた 「ねえ もうすぐ春だよ」 空は青く 高く広く 今まで見たこともない世界 一歩ずつ変わってゆく 星は大きく 知らない音 朝昼夜が回る 一日って二十四時間なんだよ 道は長く 遠く狭く 飛び越えられない距離が もどかしくて愛しいんだ 花よ咲き乱れ 朝よ輝け
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