竜の言祝

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竜は泣くことも笑うこともなく 髪が風に揺れた そよ風はやわらかい糸が好きなようだ 黙って星を探した あちこち歩いた昼の街で 人は人を愛して 人は人に愛されて そうじゃない人もたくさんいて ねえ 愛ってなんだろう、 わかんないよ 空を飛べたらあっという間の こんなに細くて歩きにくい道が だんだん だんだん 楽しくなってくるんだ 道端のいろんなことが どうしようもなく大切になってくるから なんにもないぶらり旅の ひとりきりのみんなといっしょ 忘れないよ だんだん 迫ってくる どんどん 過ぎ去ってく 思い出も時も道も人も友達も 砂時計が傾いて また砂がてのひらから零れ落ちた 愛の続きを見てる 太陽が遠い 空がこんなに小さかったこと 今までとは違う自分 足が疲れた、なんてことなくて 泥だらけの足裏 振り向けば足跡うっすらと 夜が綺麗 とても綺麗 ああ地球ってこんなにもこんなにも! 朝が待ち遠しい 煌めく太陽の一筋が 山の隙間からまっすぐ私を捉えるとき 湖も広い 鼓動が響く 深く水の底 潜れば透き通る光の管 そのひらいた穴に どんな息を吹き込めば音が生まれるの? ぽちゃん たぷん 聞こえる水のうた きら ゆら 聴こえる空のこえ あがって 寝そべる 戻れない 戻らない わからない ねえ、僕は何者? こんなにちっぽけな 手で星を掴もうとして こんなにちっぽけな 足で光を目指して こんなにこんなにちっぽけな 人がなんて大きなものをかかえて こんなにちっぽけな僕が 今日も生きてるんだ 息をしてる しんぞうが、 うごいてる 眠りについた竜の 頬に一筋 星の涙が伝った 小さく夜に煌めきながら 地に吸い込まれて消えた 竜は言葉を話そうとして 自分が何も言えることを何も 持っていないことに気づく いいな、ねえ、いいな なにか話したいな なにか話してみせてよ 言霊というものを 言祝というものを おめでとう 嗚呼ありがとう 涙が滲むほど 眩しい太陽が回った 月があんまり真夜中というものを愛するから おはよう明日の おやすみ今日の おかえり昨日から少し進んだ 竜は笑って夢を放つ 光を放つ とても美しい 息を呑むほど 空が綺麗だ、だ・だ・だ・だ 時の彼方 生きてる宇宙の最果て いつか辿り着きたくない このままでいたい 火花散らすように 花火駆け抜けるように 今日も行ってきます ぽつりぽつり 雨粒がゆっくり染み込むように ぽつりぽつり 足跡が地面にふえる ぱらぱらぱらぱら 小雨がさっと道を濡らすように ぱらぱらぱらぱら 竜も急ぐ、もっと知らない先へ ざあざあ、ざあざあ 大雨が泣き叫ぶように ざあざあ、ざあざあ 竜の心もまたちょっと 晴れてきたみたい
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