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ゴローの正体
「ところで、なんでゴローさんはマジックアイテムなんて作れたの?
天使の社会だと、工房で職人が作るものなんだけれど…」
ラーファエルが、ジョッキを片手に疑問をこぼした。
わたしも、それは不思議に思っていたところだ。
「妖精界でも、ものづくりの妖精が生産を牛耳ってるから、作り方も公開されてないよ。」
そもそも、このゴローという名の店主は、何者なのだろうか。
サイズ的に、私たち妖精?とは違うし。
天使のラーファエルのように、白い羽根や光輪もない。
2m近くの大男。
太い屈強な腕に、焦げ茶色の長い髪。
人間のような風貌をしているが、魔力量は、上級天使のラーファエルや、有名家門で魔法を得意としている、妖精の私と同格だ。
そもそも、天界と妖精界の間に、人間がいるはずもないし…。
「そりゃ、俺はここでカミさんと食堂やってんだから、作れるだろうよ。」
思わず、私とラーファエルは声を合わせて、
「え?どういうこと?」
と、聞き返した。
「どういうことも何も、俺もそこのラーファエルと同じ、天使の1人ってことだ。
天使と言うより、神使かな。狛犬だからな!
俺はこれでも、カミさんの道標なんだぜ?ハッハッハ!」
豪快に笑う店主の勢いに、私は飛ばされそうになったが、さっとラーファエルが支えてくれたので助かった。
「道標ってなに?」
私はラーファエルに尋ねる。
「ある神様に使える、首位の天使のこと。」
「家主と執事長みたいな?」
「そん感じ。」
ラーファエルはやんわりと頷いた。
「でもゴローさんは、いったい神様のどなたに使えてるの?
道標ともなれば、ずっとお側につかえているものかと思ってたけど…」
ラーファエルはゴローの方を見て、尋ねた。
「ラーファエルの認識は正しいぞ!まあ、俺のカミさんは今日も厨房でおたくらの料理作ってるからよ。一緒にいると言えばいるな!」
「え!?
カミさんって、もしかして神様のこと!?
てっきり奥さんかとおもってた。
というか、この料理神様が作ってたの!?」
私はびっくりして、料理をもう一度、まじまじと見直した。
「どうりで神聖さを感じるわけだ。」
ラーファエルは頷いていた。
というより、さっきすごく大事なことを聞き逃さなかったか?
この大男、ゴローは狛犬!?
耳もしっぽもないのに!?
私はまだ信じられない。
「大将、狛犬なのに耳もしっぽもないの?」
「おお?モフモフしたいか?」
ニヤッと笑う店主は、ヤクザには見えても、とても癒し系のわんちゃんには見えない。
「幼いころは人型になっても耳やしっぽは残っていたが、こんだけ大きくなると、しっかり変身できるようになるさ。
まあ、今日は嬢ちゃんのお祝いの日だし、出血大サービスだ!」
ぽふっ!
紫色の、妖術の煙が霧散すると、なんとゴローの頭から、白くて長い毛におおわれた耳が、背中にら赤毛が混じる妖艶なモフモフのしっぽが生えていた!!
「寝る時なんかは、この姿なんだけどよ。なんか、照れるな。」
ゆらゆら揺れる毛は、まさしく癒しだった。私は思わず、飛び上がり店主のしっぽに突進した。
ラーファエルも店主のしっぽに夢中なご様子。
大きなモフモフに囲まれて、今日までの疲れが一気に吹っ飛ぶ、そんなひとときであった。
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