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仕事終わりの一杯
「お疲れー!」
私は、地球から帰ってすぐに、行きつけの居酒屋【羽衣亭】に来た。
羽衣亭は、天界と妖精界の間に位置する、神様、天使、妖精が集いし居酒屋だ。
「お!お疲れ様!ティナ。初任務だったんだって?」
カウンター席には、ここで出会って仲良くなった友達、ラーファエルが待っていた。
「お待たせしちゃってごめんね。」
「いや、僕も今来たところだよ。」
ラーファエルはそう言うが、彼の横に積まれたジョッキの数が、長く待たせていたことを示していた。
ラーファエルは、私と同じ新卒で、天使だ。
今は、縁結びの神さまのところに就職して、働いているらしい。
「大将、花蜜ビール一杯!あと、めしべの天ぷらも!」
「僕は、聖水ビール、ボトルで。」
「はいよ!」
店主のゴローという大男は、私専用のミニチュア机セットと座布団を、いつも黙って持ってきてくれる。
ラーファエルは、私の身長の二倍近くあるビールをすぐさま飲み干していた。
「いやー、研修って思ったよりすることなくてね。早くティナみたいに下界に派遣されたいな!」
そう言いながら、ラーファエルは聖水ビールの追加を注文する。
「いやいやいや、ありえないことだらけで大変だったの!聞いてよ!…」
私は、ラーファエルに今日あったことの愚痴を聞いてもらった。
ラーファエルは、背中から生えた大きな白い翼をピクピクさせながら、笑って聞いてくれた。
「どうしよう、とっておきの作戦なんて言っちゃったけど、何にも考えてないよー!」
「ティナは考える前に魔法ぶっ放しちゃうタイプだもんねー笑」
「でも、地球では、私魔法使えないし…。ほんとにどうしよう。」
私が落ち込んでいると、ラーファエルは手を顎に当てながら、なにやらぶつぶつと呟いていた。
しばらくすると、ラーファエルが、何やら悪いことを思いついた、悪魔のような笑みを浮かべる。
「ティナ、僕にいい考えがあるよ。」
「え!?ほんと?」
ラーファエルはそういうと、カバンから羊皮紙と羽ペンを取り出して、計画を教えてくれた。
「まず…」
………ってことで、任務完了。」
ラーファエルの緻密な計画に、ただただ感嘆した。
「おおー!これならうまくいくかも!
すごいね!ラーファエル。ありがと!」
私は嬉しさのあまり、羽ペンを置いたラーファエルの指に抱きついた。
ラーファエルは、流石に飲みすぎたのか、彼の真っ白な髪とは対照的に、顔が真っ赤に、ほてっていた。
「大将、お冷ひとつ!あ、私サイズじゃないよ、ラーファエルの!」
「はいよ!」
お冷を持って来た店主が、やけにニヤニヤしていたのが気になった。
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