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ラーファエルは続ける。
「ティナ、ちょうど明日の午後から、ライダーマンのショーを近くの遊園地で行うみたいだ。
そこまで行けるスクロールと、チケットをまずは用意してみて。
未来のことをあんまり詳しく言うと、未来が変わっちゃうんだ…」
そして、ラーファエルが美しい筆跡で、羽ペンを羊皮紙に走らせていると、店主がものすごい勢いで、私たちの元に駆け寄ってきた。
「おい、ラーファエル!ここは魔法禁止って書いてあるだろ!!」
そういうと、店主は柱に貼ってある張り紙を大きく指差した。
どうやら、さっきの権能で、店主を怒らせてしまったようだ。
「ああ、ゴローさん。
さっきのは僕の権能と、ただのサーチスキルで、魔法じゃないよ。」
「権能?ああ、上級天使の固有魔法みたいなやつか。
って、やっぱ魔法じゃねーか!」
「いや、力の源が…」
ラーファエルと店主が、口論を始めそうになっている。
私は、2人の鼻の高さのあたりまで飛び上がり、間に入った。
「ごめんなさい、大将。私のせいなんだ。実は…。」
そして、私の初任務の話を、細々と店主に説明した。
店主は、気のいい人だ。私の話を聞くと、涙ぐみながら、
「そうかそうか、随分苦労してるんだなぁ。怒って悪かった。」
と、素直に謝ってくれた。
「こちらこそ、突然権能なんて使って、申し訳なかった。」
ラーファエルは胸に手を当てて、丁寧にお辞儀をした。
店主は、大きな左手でラーファエルの髪をわしゃわしゃと撫でて、大胆にジョッキを2つ置いた。
「ったく、これだから天使は。
何考えてるか分かりゃしないが、良いやつってことは確かだからな!
サービスだ。ガンガン飲んでけ!あと、転移スクロールは俺が作ってやるよ!どれどれ?」
店主は、座標を羊皮紙に書き込むと、魔力を込めて、さらっとスクロールを完成させた。
「そこの嬢ちゃんに魔法使われて、この店ぶっ飛ばされては敵わんからな。」
「そんなことしないよ!?」
大まかに言えば、ティアラにライダーマンショーを見せる→男のひと?おそらく敵役に邪魔される→赤いヒーロー、おそらく賢人とやらが現れる→ティアラの恋は実って、任務完了!になるらしい。
その後も、お酒を交えながら、ラーファエルに詳細を聞いた。
「おおー!これなら、うまくいきそうかも!」
…
これこそが、「すごいさくせん」だ。
今になって考えてみれば、正直、酔った勢いで考えたから、うまくいくのかは分からない。
そもそも、天使って酔った状態で予言なんてしても、大丈夫なのだろうか?
だけど、やってみなければわからない!という意気込みで、私はライダーマンショーの前まで、ティアラを連れてきていた。
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