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ヒーローは来る
そして今、ライダーマンショーが始まる。
「わーー!賢人様だぁ。きゃーー!」
ティアラが夢中でショーを観ている。
私も、何が起こるのかとドキドキしながら、ショーを見ていた。
しかし、悪役がティアラを連れて行ったり、それをライダーマンが助け出したりするという、
私の予想とは反して、ショーはそのまま、悪の敵を倒すというクライマックスを迎えてしまった。
今日はもう無理か、と諦めかけていた、その時だ。
「あ、べんじょ女だ。」
後ろから、ドクロがプリントされたTシャツを着た、小学2、3年生くらいの男子数人が、ティアラを指差して笑っていた。
どうやら、同じ小学校の生徒らしい。
「やーいやーいお手洗い!ヒッヒッヒ。」
「女のくせに、ライダーマン見にきてやーんの!」
確かに手洗というのは変わった名前だが、そこまで言わなくていいじゃないか。
「ティアラだもん。トイレじゃないもん、う、う、うえーーーーん!!」
始めは涙を堪えていたティアラも、ついに大声をあげて、泣き出してしまった。
泣かせてきたあの男子たちに反論したくてたまらない。
だけど、彼らには妖精である私が見えないし、声すらも届かないのが、やるせなかった。
私はただ、私の小さな手でティアラの頭を撫でて、慰めることしかできなかった。
するとーー。
「やめろーー!」
子供らしい、甲高い声の男の子が、ティアラの方をチラリと見た後、彼らに向かって突進して行った。
一対三で、圧倒的にボコボコにやられているのも関わらず、その少年は、何度でも立ち上がり、挑んでいったのだ。
「翔馬くん。」
そう呟くティアラは、いつの間にか泣き止んでいた。
ペガサスくん!?
もしかすると、自分の名前にも、ティアラに含む部分があって怒ったのかな?
ティアラを馬鹿にした男子たちは、ペガサスとの激闘の末、尻尾を巻いて逃げて行った。
ボコボコにやられたペガサスだが、ティアラに駆け寄る。
「ティアラちゃん、もう大丈夫だよ。」
ペガサスは、顔を赤らめている。もしや、赤い英雄って…
それに…
ドクン、ドクン、ドクン。
ティアラの心臓の音が、私にまで伝わってくる。
ティアラは、今までに見たことがないほど、女の子らしい、乙女の顔をして、耳の先まで、ピンク色に染まっていた。
もしや、桃色の少女って…。
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