運命の人

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 (もしかして、聞かれていたかな)  私はサーッと血の気が引いて、苦笑いをしながら四人に対峙することが精一杯。  「あのさ、そういうところだからね」  「え」  そういうと、アイは私を抱き寄せた。  「どうして遠慮するの。彼氏がいたって、今まで通り遊ぼうよ」  「迷惑じゃないの」    ミクは首を左右に振り、肩まで伸びたフワフワした栗色の髪をなびかせた。  「一度も思ったことないけれど。最近、ルカの様子が変だから、私たち心配してたんだからね。そんなに寂しかったなら、寂しいって言ってくれればよかったのに」  「だってえ、彼氏がいるからさあ」  「じゃあ、『ルカ変身プロジェクト』を立ち上げて、私たちのルカに最高級の彼氏を手に入れてもらおうじゃないの。いいよね、みんな」  私以外の全員が頷いて、私がアタフタしている間にイントロが流れてきた。  「あれっ、この曲は」  この曲は、五人で集まった時に最初と最後に歌う、お約束の歌だ。  サチはソファーに座って、選曲用の機械を膝に乗せている。私たちのことを見守りながら、送信するベストタイミングを狙っていたらしい。  場の空気を素早く察して切り替えてくれる人は、いつだってサチだ。  「サチ」  サチは両手でメガネをかけ直すと、私にマイクを差し出した。  「カラオケに来たなら歌わな損でしょ。それとも、テスト勉強しよっか。漢字の暗記カードは持っているし」  「いいっ」  サチの提案に四人が声を揃えて拒否し、顔を見合わせて笑った。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加