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「したさ。必死でお前の発言を膨らませたよ。だけど限度ってものがあるからな」
眉をしかめてわざとらしくため息を漏らして見せる姿に舌打ちしたくなった。
「あまりにも喋らないから、声を出し惜しみしてるんじゃないかという噂が出ているぞ」
「喋ろうと思うような質問を誰もしないからだ」
何様だよ。
響と関わった人がみな抱いたであろう感情、成瀬も抱いた。
広いようで狭いこの世界、悪い評判ほど早く広まる。
才能だけで渡っていけるほど世の中は甘くない。
いい加減、気付けよ。
二十九歳はもう子供じゃない。もう少し世の中ってものをわかってもいい年齢だ。
「歌うだけで報酬がもらえるなんて、素敵な商売だな」
わざと皮肉を言ったが表情一つ変えない。
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