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「僕を管理するだけで会社が成り立つなんて相当なやり手だな」
「おまえの管理には随分金がかかるけどね」
「かかった金の十倍は稼いでいるじゃないか」
「それはどういう計算だ? 経費をさっぴいたらカツカツどころかマイナスだ」
響は成瀬のジャケットを指先でなぞる。
「へえ。本当かな? 出会った頃は量販店の吊るしのスーツを着ていたくせに」
「小さくとも今は音楽事務所の専務なんだ。ショボい格好をしていたら信用にかかわる」
「信用?」
響は首を傾げた。
「身に付けているもので人の価値をを判断するような人は信用できないと思うけど」
「意外なことを言うなあ」
成瀬は喉を鳴らすように笑った。
「おまえ、人を信用したことなんかないくせに」
成瀬の肩に触れていた響の指がぴくりと跳ねる。
「……だろ?」
同意を求めるような、念を押すような、探る目つきで見つめると響は目を逸らせた。
「あなたには敵わないな」
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