7人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「何年のつきあいになると思っている。もうすぐ五年だぞ」
「なのに、成瀬さんは僕のことを全然理解していないんだな」
「どう言う意味だ?」
「別に」
「もう少し……」
言いかけて成瀬は口をつぐんだ。
何を言っても無駄だ。
少なくとも、今の響には。
歌うこと以外はどうでもいい。
本気でそう思っている。
こいつは馬鹿だ。
だが、歌うこと以外何もできないことも才能だ。
この五年、この態度でもなんとかやってこれた。それはまだ無名に近いからだ。
表に出ればいろいろなことを要求される。
歌うこと以外何もできない、それではタレント失格だ。
もちろん本人は言うだろう。
「僕はタレントではなくて歌手だ。ミュージシャンに歌以外のものを求めるなんてナンセンス!」
純粋バカにもほどがある。
頭の中お花畑、というのはこのことか。
最初のコメントを投稿しよう!