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何かを得れば何かを失う。
あの歌声が違うものになってしまった時、成瀬はきっと響への情熱を失うことになるだろう。
そのことが怖かった。
本格的な発声を学ぶこと、喉の使い方をきちんと教わることはきっと響のためになる。
そう頭ではわかっていても、そのことによって今の持ち味が失われるのなら、このまま行けるところまで行く方が得策のようにも思えた。
響の人生、将来、それよりも自分がファンであり続けることの方が大事とは、事務所の人間としてあるまじきことだとわかっている。
それでも。
酒には強い方ではないのに、考えると飲まずにはいられなくなった。
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