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どうする。
いや、俺は自分のエゴのためにためらっているわけじゃない。
今の響が失われることを恐れているだけだ。
そうなれば、今ついているファンも離れてしまうだろう。
それは避けたい。
これは都合のいい、言い訳だろうか。
いや、俺は歌手の響のことを誰よりも思っている。
それは仕事としてか? ファンとしてか?
もちろん、両方だ。
他人にあれこれ指図されるのはごめんだと言う響に、お前のためだからと無理やりボイストレーニングを受けさせたところでうまくいかないんじゃないか。
下手すりゃつぶれるぞ。
ぐしゃり、成瀬の手の中でビールの缶が潰れた。
「いや、まさかこんな風には潰れないだろうけどさ」
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