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2.羽鳥もと子の報告
「恋すればいいんじゃないですか」
マネージャーの羽鳥もと子はこともなげに言う。
「響に足りないものを学ぶのに、一番手っ取り早くないですか?」
「恋? もしかして、そういう相手がいるのか?」
「いるわけないじゃないですか」
半笑いして「あたしは絶対嫌ですもん」と断言した。
「でも、あの見た目にだまされた女を何人か知っていますけど」
「え?」
丸い顔にちょこんと乗せられた赤縁の眼鏡の奥から覗く小さな丸い目が意地悪く光る。
「成瀬さん、聞きたいですか? 聞きたいですよね? 大事な大事な箱入り息子のことですもんね」
成瀬は咳払いした。
「業務として、知るべきことだと思う」
「ええ~? 恋愛はプライベートじゃないですか」
「羽鳥さん、芸能人にプライベートはないに等しい、って君ほどのベテランが知らないわけないよね?」
正直、動揺していないといえば嘘になる。
あの響が?
まさか。
俺がマネージャーをしていたころには浮いた話一つなかった、気配さえなかった。
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