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「あたし、これから打ち合わせがあるんですよ。その話は後でしません? 鰻屋か焼き肉屋で」
「……がっつりボリューム系だな」
思わず胃のあたりを抑えた。
「お寿司でもいいですよ。あたし一度でいいから銀座の寿司屋に行ってみたい……」
「俺も行ってみたいよ。誰かの奢りで」
「あら、専務はよく行かれているんじゃありません?」
「接待で食ったものなんて食った気がしねえよ、というかほとんど食えねえよ」
「あら勿体ない」
本当に勿体ない、くだらない。
響が思うように世の中がシンプルだったらどんなにいいだろう。
「じゃあ、平野で」
成瀬は近所にある老舗鰻屋の名前を口にした。
「え、いいんですか」
羽鳥の小さな目がまんまるになる。
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