2.羽鳥もと子の報告

6/19

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「どうした?」 「成瀬さん、いいんですか。思った以上にお高いんですけど」 「あ」  気が抜けた。 「どうぞどうぞ、お気になさらず」  笑いがこみあげる。 「羽鳥さんには苦労をかけているから、一度ご馳走(ちそう)しておかなきゃと思っていたからね。遠慮(えんりょ)せず好きなものを頼んで下さい」 「じゃ、遠慮なく」  丸い顔がにんまりとさらに丸くなる。 「松コース、いかせていただきます」 「コース……」  う巻に肝吸い白焼き、うな重と鰻づくしのフルコース、本気で遠慮なくきやがった。 「飲み物は?」 「飲むより食べる派です」 「少しは飲めるんでしょ?」 「じゃあ、一杯だけ、ビールを」  にやりと笑う。 「飲ませなくったって、(しゃべ)りますよ。心配でたまらないんでしょ? 今はあたしが一応マネージャーですけど、成瀬さんだってまだ片足突っ込んでるようなものですもんね」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加