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「専務」
声が改まった。
「無理しないでくださいね。病院へ……」
羽鳥の言葉を成瀬は遮った。
「もう行った」
成瀬はカバンを探って薬袋を出してみせた。
「ほら、胃薬を処方してもらったよ」
「なら、良かったです」
羽鳥は姿勢を正すと、礼儀正しくお辞儀した。
「ごちそうさまでした。お大事になさってください」
「響のこと、頼んだぞ」
「はい」
頼もしい笑顔につられて成瀬も笑顔になった。
頼むよ、本当に。
難しいやつだけど、信じられないぐらい不器用でまっすぐなんだ。
絶対に売ってやりたい。
ドームか武道館。
年内には必ず。
胃のあたりを押さえながら成瀬は誓う。
俺が動けるうちに、絶対に。
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