3.不協和音の始まり

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「こだわるのは悪いことじゃないですけど、限度(げんど)ってものがあるでしょう?」  ああ、例の悪い(くせ)が出たか。 「あいつのそういうところは、今に始まったことじゃないだろう?」 「どんどん(ひど)くなってきて、手に負えないレベルです。一日じゅうやってオーケーが出ないって、どう思います? 出ないんじゃなくて出させないんですよ。だって石渡さんはオーケー出してるんですよ? 響だけが納得がいかないって、自分へのダメ出しがすごくて。こんなものでオーケー出す方がおかしいとまで言い出す始末で。そこまで言われたら、石渡さんの立場がないじゃないですか。じゃあ勝手にしろって、もう最悪の空気ですよ。昨日は早々に切り上げて解散しました。今日も同じ状態だったら……スタジオは延長で抑えましたけど、このままじゃみんなが降りるって言い出しそうでひやひやしてます」  苦い顔になった成瀬を、自分への叱責(しっせき)と思ったのか羽鳥は小柄とは言い(がた)い丸い体を恐縮するように縮めた。 「すみません。うまく収められなくて」
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