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バッサリ言い捨てて羽鳥は両手を上げてみせた。
「あたしも限界。広瀬さんの頼みでも、もう、無理かも」
「そう言うなよ。頼むよ。羽鳥さんがしかいないんだから」
「必ず来てくださいよ。なるべく早く」
「わかった」
痛々しくて見ていられない、ってなんだよ。
乱暴にハンドルを切りながら、ナビを見る。
信号が赤になった。
「くそっ」
ブレーキを踏みながらなぜこんなに急いでいるんだ、と思う。
一刻を争うわけじゃない。
いつもの、響の悪い癖が出ただけだ。
そう思いながら胸騒ぎがする。
苦い過去を思い出す。
あんな思いをするのは二度とごめんだ。
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