3.不協和音の始まり

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 扉をそうっと開けると、中にいた人たちが一斉にこちらを振り返った。  たくさんの視線を一身に浴びて、たじろぐ。  うわ、すでに空気が煮詰(につ)まっている。  重たく濁ってどろどろだ。  ため息でできているような重い空気を払うように、成瀬は軽く咳払いをした。 「お疲れ様です。差し入れ、持ってきたんだけど」  名のある料理屋の弁当が入った大きな紙袋を掲げて見せた。  とたんにその場の緊張がほどけた。 「うわ、さすが成瀬さん」 「ここ、超有名店ですよね」 「ありがとうございます」 「ごちそうさまです」  かけられた声に軽く頭を下げて応えながら、成瀬はあたりを見回した。  響の姿だけがない。 「響は?」 「あっちにこもってる」  石渡がうんざりした土気色(つちけいろ)の顔で録音ブースを(あご)で示した。
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