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扉をそうっと開けると、中にいた人たちが一斉にこちらを振り返った。
たくさんの視線を一身に浴びて、たじろぐ。
うわ、すでに空気が煮詰まっている。
重たく濁ってどろどろだ。
ため息でできているような重い空気を払うように、成瀬は軽く咳払いをした。
「お疲れ様です。差し入れ、持ってきたんだけど」
名のある料理屋の弁当が入った大きな紙袋を掲げて見せた。
とたんにその場の緊張がほどけた。
「うわ、さすが成瀬さん」
「ここ、超有名店ですよね」
「ありがとうございます」
「ごちそうさまです」
かけられた声に軽く頭を下げて応えながら、成瀬はあたりを見回した。
響の姿だけがない。
「響は?」
「あっちにこもってる」
石渡がうんざりした土気色の顔で録音ブースを顎で示した。
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