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音をたてないように息を殺して録音ブースに入ると、響が隅に置いてある椅子に背中を預け、上を向いて目を閉じているのが見えた。
眠っているのではない。
目を閉じ、頭の中で曲を再生しているのだ。
ソファーの前のテーブルには、譜面とペンが数本、乱雑に置いてある。
ぱきりとその目を開け、ガバリと起き上がると赤いペンを手に取り譜面になにやら書きなぐる。
軽く頷き、指でカウントをとり、また何かを書き加える。
散らばった譜面をまとめると再び寝転がり、両手を胸の前で軽く組んで深く息を吐いた。
頭の中で曲を再生し始めたようだ。
成瀬は黙ったまま、コンビニで買った水─常温に近い状態に戻した温度だ─を差し出した。
気配を感じたのだろう、うっすらと目を開けてボトルを受け取ると、温度を確認するように両手で包み込むように持ってから、ゆっくりと口へ運んだ。
青白く細いのどぼとけがごくんと上下するのを見ながら痩せたな、と思う。
もともと線は細い方だが、げっそりほほがこけた響は、具合が悪いようにも見えた。
「大丈夫か」
いらいらせかす気持ちを抑え、ゆっくり落ち着いた声を出すように心がけた。
かつてマネージャーとして一緒にいたころのように。
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