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声がメロディーが、感情に染まり、空気を染める。
最後の一音が消え、どこからか戻ってきたかのように響が目を開き体の力を抜くと魔法が解けたように皆、我に返り拍手をした。
響がヘッドフォンを外す。
指でオーケーサインを作りプロデューサーが頷く。
ほっとしたように響が口元を緩めて頬から顎のラインにかすかな笑みを貼りつけたまま出てくる。
この顔。
成瀬もつられて頬が緩む。
「いい出来だった」
空気は成瀬が入って来た時と一変している。
高揚感。
興奮気味に喋る声。
ハイタッチ。
おつかれ、おつかれー、おつかれさまでしたー、声が重なり、足音も軽やかだ。
「どうだ、この後みんなで飯でも」
お疲れ様でした、この後どうする? ぱあーっといくか、にぎやかな声に背を向け、誘いの言葉に首を横に振ると、響はさっさと出て行ってしまった。
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