3.不協和音の始まり

17/22

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ
「響!」  ばかなのか俺は。  相手はもう大人だ。  放っておけばいいじゃないか。  好きにさせておけばいい。  こんなことをしているから過保護だといわれるんだ。  そんな成瀬の思いを見抜いたかのように、石渡が後を追おうとする成瀬の腕をつかんだ。 「こんなこと、言いたくないけど、響のああいうところ、成瀬さん、あんたが甘やかしすぎてるせいだとオレは思うぜ」  無言(むごん)でその手を振り払うと、頭だけ下げて走り去る。  そうかもしれない。  俺のせいかもしれない。  今一つ知名度が上がらないのも、番組からお呼びがかからないのも、俺の手腕が、やり方が、まずいからなのか。  「響」  いた。  成瀬の車のドアの前に突っ立って「早く開けて」と言わんばかりにドアの金具をかちゃかちゃといじっている姿は、大きな子供のようだ。  とりあえず、倒れてはいないことに安心した。 「今、開ける」  ロックを解除すると、あたりまえのように後部座席(こうぶざせき)に乗り込んだ。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加