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マンションに着くと後部座席を振り返り、青白い顔を眺めた。
ツンと高い鼻梁、形の良い薄い唇、閉じた瞼を縁取る長い睫毛。
よくもまあ、こんなに見事にバランスよく作られたものだ。
「響、起きろ」
起こすのは忍びなかったが、いくら成瀬でも熟睡した響を担いでは歩けない。
響は細身で体重はおそらく成瀬より軽いだろうが、百八十二センチの身長は成瀬より頭一つ分高いのだ。
引きずっていくわけにもいかない。
「着いたぞ」
その白い頬に軽く手を当てると目が薄く開いた。
むくりと起き上がり外へ出ると顎を上あげ、喉を伸ばすような仕草をした後、首を左右に振った。
「歩けるか」
声をかけると声を出さずに頷いた。
声を使い果たしてしまったとでも言いたいのか。
差し伸べた手を軽く払って、響は車を降りると歩き出した。
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