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4.カウントダウン
「成瀬さんはいつまで僕を子ども扱いする気なの?」
珍しくすっきりと機嫌のよい顔をした響は、差し入れでもらったシャインマスカットの粒を人差し指と親指でつまんで、透かすように見てからゆっくりと口に含んだ。
「いつになったら大人になるのか、こっちが聞きたいよ」
「大人になるっていうのは、二つのダを覚えるって事か」
「二つのダ?」
「妥協と、打算」
「わかっているんじゃねーか。でもその二つを馬鹿にするな。大事なことだ。前にレコーディング明けにぶっ倒れて病院直行になったことを忘れたわけじゃないだろう。この間のレコーディングも似たようなものだった。またあれを繰り返す気か」
「病院には行ってない」
「ぶっ倒れる寸前だったくせに」
「寝て食ったら治った」
「あんまり、ひやひやさせないでくれよ」
響はうつむいた。
「僕だってあんな目に合うのは二度とごめんだよ。それにあの時……成瀬さんは僕のことをまるで薬物中毒患者のように扱ったよね。酷い話だ」
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